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Sweet Inspiration / The Derek Trucks Band

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このアルバムは、とてもいい!
春先に手に入れて以来、ずっと私の音楽プレーヤーでは欠かせないアルバムになっています。

何よりも、これまでのスタジオ盤より落ち着いて聴ける感じがします(ライブ盤は聴いていないので・・・)。それは、このアルバムが“歌”を軸に作られていることと無関係ではないはず。そんな余裕を感じられます。

例えば、この曲だって、これまでのギター中心の志向だと絶対に実現しなかった部分だと思う。ギター中心の時のこの人のプレーは張り詰めたような緊張感溢れるスライドギターが売りで、それがとてもマッチしていたから。

でも、この曲のように、緩いテンポで、ボーカルと呼応するスライドに適度な緊張感を持たせた演奏は、これまでの曲にはないような安らぎを与えてくれるではありませんか。そう、それはちょうど70年代のスワンプロックを聴いているかのようなのです。

インスト中心のアルバムも嫌いではなかったけれど、こんなにもボーカルメロディーと呼応するスタイルが上手いなんて思いもしなかった私の本質を見抜くセンスは、まだまだ甘いですね。

≪From アルバム『Already Free』≫

Sail The Ship / Eddy Clearwater

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最近、またブルースにはまっています。
しかも、これまでほぼ手をつけていなかった80年代以降のブラック・ブルース。いざ分け入ってみると、意外と名盤候補が多いではありませんか。

っで、今日紹介する“チーフ”ことエディのアルバムもそんななかの1枚。発売当時、このアルバムはあのオーティス・ラッシュが参加していることでも話題になったようです。

終盤のこの曲は、テキサススタイルのシャッフル・ブルースであり、とてもジャムっぽい雰囲気が良く出ていてブルース好きには溜まりません。

エディのやや暴力的なボーカルもドスが効いていて、かなり私のツボ。ギターの方はというと、やや線が細い感じは否めませんが、これはこれでストラトの素直な音が良くわかり乙なものです。

そして、しっかりと脇を固めるリズム隊とピアノに乗り、2本のギターが交互に歌いあうなんて最高です。思わず私もギターを手に取り参戦したくなってしまいます・・・。

しかし、日本ではかなりマイナーな存在なこの人。
実は、本国ではかなりのキャリアを持っている人だそうで・・・なかなか侮れません。

≪From アルバム『Flimdoozie』≫

That Old Black Magic / Holly Cole

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「好きだなこういうハジけ方って。」
ジャズシンガーのホリー・コールのこのアルバムジャケットは、何度見てもそんな新鮮な気持ちを与えてくれます。

一般的にジャズっていうと薄暗く、スモーキーなジャケが多いでしょ?そんななかでモダンな印象のこのジャケはとても新鮮。

それは、このアルバムがジャズはもとよりポップスをジャズアレンジした曲が多いことと関係があるのかもしれない。

でも、今日取り上げるのは、このアルバムのジャズスタンダード。
イントロのピアノからしてどうですか、この美しさは。こんなに広がるピアノから始まって、本編に入るととてもソリッドな演奏。
このギャップがまた堪りません。

もちろん彼女の歌はとても素晴らしくて、声量、表現力はもちろんのこと、その濡れた歌声から醸し出されるお色気もスゴイ。私なんかは、この曲のようにスイング感覚のある曲での彼女の歌い方には鳥肌が立ってしまいます。

ジャズって文化が薄いからか、日本では一般の人からあまり聴かれることのない彼女の名前ですが、ジャズに限定しなくとも間違えなく現代の最高シンガーの一人です。

彼女の本格的な“ポップ・アルバム”ってのも、もしあるのならば聴いてみたいっと思ってしまう私メです。

≪From アルバム『私のいる時間』≫

サマータイム・ブルース / RCサクセション

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まさか、まさかの訃報でした。
こんな形で日本最高のシンガーとの別れがきてしまうとは・・・。

私は清志郎さんの持つそのユーモアとポップスの裏側にある毒々しさがとても好きでした。

フェイバリットは、オーティス・レディングをはじめとするソウルミュージックということでしたが、清志郎さんはそこをベースとしたとても大きなポップセンスでガキンチョの頃から私の心をわくわくさせてくれていました。

今日は、清志郎の歌の中で、オリジナルではないけれど、私に大きな影響を与えたこの曲を。

そう、誰もが知っているロックスタンダードのカバーなんだけど、
この歌詞がすごい。所謂メッセージソングなんだけれど、普通なら歌詞として成立しないような歌回しが随所にみられて、ここだけでも清志郎独特の語感を堪能できます。

「原子力発電所が建っている」なんて、メロディをつけられませんよ、普通は。

すべてがこの調子で進むものだから、大ヒットって訳ではなかったみたいだけれど、私を含め多くの人の胸には鮮明な印象として残っています。

このロックセンスの塊のような人から、もう新しい刺激を受けることはないのか、と思うと本当にさびしくなってしまいます。

謹んでご冥福をお祈りいたします。

≪From アルバム『ゴールデン☆ベスト』≫

Lost Paradise / Joanna Wong

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2000年に、ノラ・ジョーンズの『Come Away with Me』がブレイクしてからっていうもの、“ノラ・ジョーンズっぽい”ってのが、何やらひとつのジャンルとして確立している趣があります。

確かに、それだけのインパクトはあったし、カントリーとジャズの中間をいくことで、何よりも「JAZZ=堅苦しい」って印象を拭い去るような気楽さ(ポップさ?)があったような気がします。

今日の彼女、ジョアンナ・ウォンもそんなフォロワーのひとりでしょう。ただし、他のフォロワーたちと違うのは、彼女が中華圏出身ということ。アルバム全体が東洋的な湿っぽさと、アメリカンなドライさの同居といった雰囲気でとても心地よいのです。

で、この曲は、アルバム2曲目のナンバー。
リムショットの小粋なテンポがおしゃれで、そこに流れるオルガンの音に彼女の声とアコースティックギターでちょっとだけ飾り付けをしてある曲。

本当にシンプルなアレンジだけれど、これが彼女のちょっとスモーキーな声とはとてもよく合っています。

ボーカル面では、サビではコーラスを入れて厚みを出し、最後の細微の前、メロが変わる部分ではダブルトラックでドライさをかもし出すっていうアレンジも。

本来、正統派のジャズではなかなか聴かれないダブルトラックの手法に彼女(それともプロデュースした親父さん?)の感性の高さ感じてしまいます。

ノラ好きの中には、ボーカルメインって方もいるとは思いますが、彼女の場合、バンドサウンドの中のボーカリストって考えたほうがよいかも。

私は好きです、とってもね。

≪From アルバム『Start From Here』≫